社長ブログ

未来をここまで正確に描いた本は、そう多くない

――『世界秩序が変わるとき』を読んで

未来をここまで正確に描いた本は、そう多くない

――『世界秩序が変わるとき』を読んで

2024年12月に出版された『世界秩序が変わるとき』を、私が読んだのは2025年12月だった。
にもかかわらず、読後しばらく「これは未来予測の本だ」ということに気づかないほど、
今まさに起きている現実を、そのまま言語化した書籍だと感じた。

それほどまでに、この本は時代の構造を的確に捉えている。


新自由主義というパラダイムと、日本の「失われた30年」

90年代以降、冷戦が終結し、世界は「新自由主義」という一つのパラダイムに包まれた。

  • 人種・性別・国籍は問わない
  • 稼げる人が偉い
  • グローバリズム、自由貿易こそが正義

一見すると、とてもフェアで合理的な価値観だ。
実際、この価値観によって救われた人、豊かになった人も確かに存在する。

だが、得をしたのは「一部」だった。

象徴的なのは、
アメリカのウォール街の人々、そして中国である。

一方で、この新自由主義の下で、
それまで“強者”であったはずのアメリカ白人労働者層は、急速に地位を失っていった。

そして日本はどうだったか。

冷戦構造が終わり、日本の地政学的重要性は低下した。
さらに、80年代までの日本の高度経済成長は、アメリカにとって「脅威」にすらなっていた。

言い方は過激だが、
カジノのディーラーであるアメリカは、日本ではなく中国に勝たせると決めた
――そう解釈すると、90年代以降の世界の動きは、驚くほど腑に落ちる。


「失われた30年」は、別の見方もできる

日本の失われた30年は、一般的には「停滞」「失敗」と語られる。
しかし、この本を読んで、私は少し違う解釈を持つようになった。

本来なら、日本企業はもっと大胆なリストラを行っていてもおかしくなかった。
本来なら、これほど長期にわたって自民党政権が続くこと自体、不自然だった。

それでも日本は、

  • 急激な格差拡大を選ばず
  • 一部の人を切り捨てるより
  • 「皆で平等に、少しずつ貧しくなる」道を選んだ

これは、それを選択できるだけの豊かさを、それまでに築いてきた国だからこそ可能だったとも言える。

「失われた30年」とは、
日本社会全体の、暗黙のコンセンサスだったのではないか。


トランプ政権と、日本に再び巡ってきたチャンス

トランプ政権は、「自国第一主義」を掲げ、新自由主義を明確に否定した。
その結果、グローバリズムの中で割を食ってきた人々の支持を集めた。

そして皮肉なことに、
この新自由主義の転換によって、最も恩恵を受けうる国の一つが日本でもある。

長きにわたり、新自由主義の勝者ではなかった日本。
だが、だからこそ、次の秩序に適応する余白がある。

本書は、その意味で、
これからの日本に、静かな希望を与えてくれる一冊だった。


それでも、注視すべき「中国」という変数

ただし、本書の描写と、現状が少しズレ始めている点もある。
それが、中国に対するアメリカの姿勢だ。

トランプ政権は、長らく中国を明確な敵国とし、関税戦争を仕掛けてきた。
しかし、ここ2〜3ヶ月の動きを見ると、
米中関係は急速に改善しているようにも見える。

もしこの関係性が本格的に変わるなら、
そのとき日本の立場はどうなるのか。

これは、楽観も悲観もせず、
冷静に注視し続ける必要があるテーマだろう。


経営者として、この本を読む意味

世界秩序の変化は、国家レベルの話で終わらない。
必ず、企業経営や個人の選択にまで降りてくる。

「どのパラダイムが終わり、どの価値観が始まるのか」

それを理解しようとすること自体が、
これからの時代の経営者にとって、
最も重要なリテラシーの一つなのだと思う。

そういう意味で、
この本は単なる国際政治・経済の分析書ではなく、
未来に対する“地図”のような一冊だった。

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