民泊・無人ホテル事業に関するさまざまな情報を連載形式で発信する『川村コラム』。
今回のテーマは「札幌民泊今昔物語」。最後までお付き合いいただければ幸いです!
はじめに
2018年6月、民泊新法が成立し、2022年11月時点では4年5ヶ月が経過しました。
業界としての歴史が浅い黎明期であるためなのか、前年と同じ年は1年としてありません。
常に状況は目まぐるしく変化し、ダーウィンの「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き残るのでもない。 唯一生き残るのは、変化する者である」という言葉が頭から離れることはありません。
今回は、それが具体的にどんな感じだったのか、振り返ってみたいと思います。
そしてその足跡を見れば、アフターコロナにはどのような光景が広がるのか、その未来予測のヒントにもなるのではないかと思います。
2017年
民泊新法(住宅宿泊事業法)の概要が世に示された頃です。
「営業できる日数が、年間180泊に制限される」。このことが既定路線として知れ渡ったとき、東京や京都などは、これでは採算が合わないと撤退する事業者が続出しました。
札幌は繁閑差が激しい分、そのダメージは少ないと目されており、撤退を踏みとどまる事業者が多くいました。
これが後に、札幌が全国屈指の民泊物件数を誇る街として成長する土台となっていきます。
その頃私はというと、市議会議員や道議会議員に連日のように会っては民泊の素晴らしさを熱く語っていました。
目的は、民泊新法に対して札幌市や北海道がより厳しい規制をかける条例を作る可能性があったから。時には道議会に請願書を提出したことも。
それが功を奏したかどうかはわかりませんが、幸いにも厳しい規制は限定的な範囲に留められました。
2018年
6月の民泊新法施行を目前に控え、プレーヤーたちはその法対応に向けた準備に奔走していました。
事業者、管理代行業者のみならず、Airbnbや行政側も手探り状態のなか、その誰もが一刻も早く届出番号(これがないと営業ができない)を取得しスタートダッシュを切ろうと躍起になっていました。
新法施行直後は瞬く間にたくさんの予約が入り、そして宿泊単価も高く、とても興奮したことを覚えています。
しかし、その興奮冷めやらぬ9月。北海道は大地震に見舞われ、数ヶ月に渡る稼働減少を強いられることとなるのです。
2019年
年始早々から稼働は好調で、地震の反動需要とも思われるほどの高稼働が実現されました。
新規案件の依頼も殺到しており、営業会議もとても活発な日々が続きました。
しかし、日韓関係の悪化が顕著となり、繁忙期であるはずの7月8月の予約や単価が想定よりも下回る状況が生まれました。
また、昨年のこの時期は新法施行直後で供給量(エリア内全体の物件数)が少ない状態でしたが、わずか1年で札幌の民泊は全体で2,000室を超えていたため、勝ち組物件と負け組物件の差が鮮明になっていった時期でもありました。
朗報として、秋には翌年の東京オリンピックのマラソン会場が札幌に変更されるというニュースがあり、札幌の民泊業界全体が歓喜に包まれたのでした。
そんな中、待ちに待ったオリンピックイヤーに向かうのでした。
2020年
1月。「武漢肺炎」という言葉がニュースを賑わせるようになりました。
民泊事業にどの程度の影響があるのか?なんとか2月の雪まつりシーズンへの影響は軽微であってほしい…と、おぼろげながら思っていました。
2月。一部のキャンセルはありながらも「よかった、この程度か」そんな印象だった日々から一転。長く苦しい日々が始まります。
国境の封鎖によって売上が消滅する、という想像を超えた事態が発生。
売上が望めない民泊事業者は、いかに助成金を獲得するか、サッポロ割やGoToトラベルキャンペーンなどの国内需要促進施策にアジャストするか、それが焦点でした。
秋にはワクチンが完成するらしい、21年にはオリンピックは開催するがどうやら無観客らしい。
度重なる緊急事態宣言、まん防、外出自粛など、民泊業界だけでなく世界全体が見えない敵との戦いに強制参加させられた時代でした。
2021年
ワクチン接種が開始されるも、第3波、第4波、政権交代、オミクロン株の出現など、まだまだコロナは猛威を振るいます。
そのような中でも人々は、居酒屋ではなく民泊施設で宅飲みをするという行動が徐々に存在感を増していました。
また、”三密回避”に有効だったのか、はたまた在宅勤務に疲れて解放感を求めているのか、都市部ではなく郊外やリゾート型の民泊物件が抜きん出て好調に転じ、目立ちはじめました。
一方で、かつてのドル箱だった札幌の中心部に位置する物件は、一人負けの様相を呈していました。
2022年
3月から潮目が変わりました。
本来3-4月は閑散期なのですが、なぜか繁忙期の忙しさ。それは、春休みの旅行を仲間と共に過ごす若い世代の需要でした。
思えば、貴重な学生時代の大半をコロナに奪われた世代です。我々が手がける民泊がその方々に貢献できていることに誇りを感じました。
民泊はオワコンではない。最先端すぎたのだ!そんな勇気を学生さんからもらいました。
7-8月は、札幌のほぼ全ての物件がコロナ前のような稼働を取り戻しました。
おわりに
これが札幌民泊今昔物語、というか時系列に概況を整理したわけなのですが、いかがでしたか?
1年たりとも同じ年はなかった、という冒頭の言葉の通り、とても目まぐるしく状況は変化しました。
特に私はもともと不動産業界出身なので、歴史の長い業界にある「歴史は繰り返す」的なセオリーを経験し、身に染みています。そのサイクルは10年から20年程度。
一方で民泊は良くも悪くも外部要因の影響が非常に大きく、地震・災害・戦争など予測が難しい突発的な出来事から、市場参入者の増加など容易に予測できるものまで、変化のタイミングやサイクルは多様です。
サプライヤーについても、不動産業界は歴史に応じて層は分厚いですが、民泊業界は脆弱。つまり、まだまだ産業として未成熟なのです。
そしてこれだけ安定感がなければ、まともな感覚の大企業は参入しづらいものです。
だからこそ、大きなチャンスがあります。
乱世の英雄、そんな人に似合う業界なのだと思います。
10年くらいすれば、もう少し落ち着くのだとは思うのですが。。。
◆もっともっと詳しく知りたい方はぜひ音声メディアもどうぞ!
MASSIVE SAPPORO 人事広報室の放送室 〜民泊黎明期から今までをふりかえって 編〜
https://stand.fm/episodes/5eccbf8100ec6e16253b0159